💬 雑談
小説『足りない』6 光栄なこと
みね·
#小説部#足りない
どもみねで〜す!
久しぶりの小説更新です!wみんな前の話忘れていると思うから、「覚えない!」人や「初見!」って言う人は一気読みのスレ作ったから見てね〜!!
https://mrsgreenapple.fan/t/4722
実は7話も完成してます✨でも今回の話に3人コメントor考察が来たら公開しようと思います!
※この物語はフィクションです。
作中に登場する人物名・団体名などは実在するものを使用していますが、ストーリー・設定・出来事はすべて創作です。実在の人物・団体・事実とは一切関係ありません。
また、本作品には事件や犯罪を題材とした表現、心理的に重い描写が含まれます。あらかじめご了承ください。
6 光栄なこと
6月8日 16:49
午後の光が、スタジオの窓から細く差し込んでいた。机の上には、さっき鈴木さんから渡された二つの資料が並んでいる。一つは、Mrs. GREEN APPLEとしての海外イベント。もう一つは、若井のソロライブ。
どちらも、簡単に捨てられるような話ではなかった。
「……俺、やりたい」
しばらく黙っていた若井が、ぽつりと言った。
「ソロライブ」
僕は資料から顔を上げた。
「そりゃ、やりたいだろうね」
「うん」
若井は少し笑った。
「ずっと、やってみたかったから」
その笑顔を見て、僕は一瞬だけ何も言えなくなった。若井がソロでステージに立つ。ギターを持って、自分の音楽を届ける。想像できないわけじゃない。むしろ、きっと似合うと思った。でも、でも。
「ただ、今はMrs. GREEN APPLEを優先するべきじゃない?」
そう言うと、若井の笑顔が少しだけ消えた。
「……なんで?」
「だって、三人でやってきた仕事だから。海外のイベントなんて、そう何度もある話じゃないでしょ」
「それは分かってるよ」
「だったら――」
「でも、ソロも一回しかないかもしれないじゃん」
思ったより強い声だった。僕は黙った。
「今回逃したら、次いつできるか分かんない。そもそも、次があるかどうかも分かんないし」
「……」
「俺だってミセスが大事だよ」
若井は資料を握ったまま、僕を見る。
「だからこそ、ちゃんと自分の音楽もやってみたいんだよ」
その言葉に、僕はすぐには返せなかった。若井がMrs. GREEN APPLEを大切にしていないなんて、そんなことは思っていない。むしろ、誰よりも大切にしていることくらい知っている。だからこそ、僕には分からなかった。どうして今なのか。
「……涼ちゃんはどう思う?」
僕が尋ねると、涼ちゃんは二人の資料を見比べた。
「俺は……どっちも大事だと思う」
「それじゃ答えになってないよ」
若井が苦笑する。
「そうなんだけどさ」
涼ちゃんは少し困ったように笑った。
「俺たち三人でやってきたことも、若井が一人でやってみたいことも、どっちかを『大したことない』ってするのは違うと思う」
その言葉に、僕は何も言えなかった。正しいと思った。でも、正しいからこそ困った。
「……じゃあ、どうする?」
誰も答えなかった。
「…俺は挑戦したい。レッドカーペットもとても光栄なことだって分かってるし、俺の選択が二人のことを蔑ろにしていることも分かってる。それでも…やってみたいんだよ……!」
久しぶりに見た若井の涙。
「……そんな顔すんなよ」
僕がそう言うと、若井は慌てたように目元を拭った。
「してないって」
「してるよ」
「……元貴だって、そんな顔してるじゃん」
そう言われて、言葉に詰まった。自分では気づいていなかった。でも、きっと僕も同じだった。若井の気持ちを否定したいわけじゃない。ソロをやることが嫌なわけでもない。ただ、三人で積み重ねてきたものを、簡単に置いていってほしくなかった。Mrs. GREEN APPLEとして、ここまで来た。三人で音を鳴らして、三人で悩んで、三人で決めてきた。
だから、今回もそうするものだと思っていた。
「……若井がやりたいなら、やればいいと思うよ」
自分でも驚くほど、声は静かだった。若井が顔を上げる。
「本当に?」
「うん」
そう答えたはずなのに、胸の奥には引っかかるものが残っていた。
「でも」
その一言で、若井の表情が止まった。
「ミセスを後回しにするのは、違うと思う」
「……後回しになんてしてない」
「結果的にはそうなるじゃん」
「…ならないよ」
「なるよ」
「ならないって!」
さっきまで涙を浮かべていた目に、今度は苛立ちが滲んだ。
「俺は、ミセスを捨てたいなんて一回も言ってないだろ」
「そんなこと言ってないよ」
「じゃあ、じゃあ…なんで分かってくれないの?」
その言葉が、妙に胸に刺さった。
分かっていない。確かに、そうなのかもしれない。
僕は若井の気持ちを理解しようとしていた。でも同時に、自分が正しいと思う答えへ若井を連れていこうとしていた。それに気づいた瞬間、何も言えなくなった。
「……ごめん」
若井が小さく呟いた。
「俺も、言いすぎた」
「いや……」
僕は首を横に振った。
「僕も、ちゃんと考える」
そう言うと、若井は少しだけ笑った。
「……うん」
それで、この話は終わった。
少なくとも、その時の僕はそう思っていた。
6月13日
「……そこまでは、分かってる」
目の前の涼ちゃんが、静かに言った。僕は顔を上げる。
「僕も、その場にいたから」
涼ちゃんは、少しだけ間を置いた。
「若井がソロをやりたかったことも。元貴がミセスを大切にしてたことも」
その声は落ち着いていた。けれど、その目は笑っていなかった。
「……だから、そこまでは分かってる」
そして、涼ちゃんは僕を見た。
「…夜に、何があったの?」
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